概念の実体化というワナ

投稿日:2017年4月1日 更新日:

概念の実体化というワナ

ぼくたち人間は陥りやすいピットフォールがあります

そのひとつが「概念の実体化」です。

例えば、有限と無限で考えてみましょう。

有限とは限りがあること、無限とは限りがないことです。

このとき、「無限は有限のなかに含まれるか?」と問われると、皆さんはどう答えますか?

おそらく、多くの人は「無限は有限のなかに含まれない」と答えるはずです。

この回答は一見すると正しいように感じますが、本当にそーでしょうか。

実のところ、そう答えたらすでに概念の実体化というピットフォールに陥っているんです。

例えば、10センチ×10センチの正方形の面積は有限です。

しかし、その正方形のなかに点は無限に打つことができます。

また、その正方形の線分は有限ですけど、その分割は際限なくできます。

「有限は限りがあり、無限は限りがない」という概念の意味を実体化すると、無限と有限は無限⊃有限という関係性に固定されしまいます。

その結果として、発想がプアになってしまい、視点によっていくらでも無限⊂有限という関係性があるのに、それに気づくことができません。

概念の実体化によって生じる問題は、作業療法でいくらでも認められます

例えば、作業療法と他領域という概念を実体化していることがあります。

すると、「作業療法という領域内で頑張るか、それ以外の領域に認められるために頑張るか」という二者択一のプアーな発想に縛られてしまい、一挙両得するためのストラテジーを練ることができなくなります。

作業療法の発展を考えると、これはけっこう深刻な問題をもたらします。

発展に欠かせない発想の自由度が著しく減退するわけですからね。

また例えば、主観的認識と客観的事実という概念を実体化しちゃうことがあります。

これに陥ると、「主観的認識はいい加減で怪しく、客観的事実こそが重要である」という貧相な発想から抜けられなくなります。

逆に、「主観的認識こそ重要で、客観的事実なんてそもそもない」というこれまた驚くほどプアーな発想にとり憑かれる人もいます。

視点のとりかたによって、主観的認識と客観的事実のどちらもそこそこ怪しく、どちらもそこそこ確からしいのも関わらず、です。

クライエントと作業療法士の治療関係を考えると、これはなかなかやっかいな問題をもたらします。

治療関係を基底で支える臨床判断をアンバランスなものにしてしまうからです。

概念の実体化は、ぼくたちの骨の髄までしみこんだ思考のクセのようなものです。

このワナに陥ると、主張は強くなるものの貧相な回路のなかでしか展開していきません。

それによって生じる様々な弊害は人類の歴史がたくさん教えてくれます。

同じ轍を踏まないように、概念の実体化というワナに陥らないように注意しましょう。

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