無理に(自然でない)、かつ過度にコミュニケーション関係を作っていく必要はない by 「コミュニケーションを学ぶ ひとの共生の生物学」(森岡周・著)

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本記事では著者から頂いた献本を紹介します。

縦横無尽にコミュニケーションを論じ尽くす!

コミュニケーションを学ぶ ひとの共生の生物学」を読みました。

今後、コミュニケーションを論じるにあたっては、避けては通れない本だと感じました。

まず、驚いたのが生物学、神経科学、記号論、人類学、芸術論、哲学、医学、文学、マスコミ論、SNS論、心理学など多岐にわたる学際的視点からコミュニケーションを論じているということ。

しかも、その話題は近未来社会まで含むという。

半端な知識量、洞察力、筆力では、これは書けないです。

コミュニケーションの本質

なので、議論が多岐にわたるからといって、話題が散逸するかというと、まったくそんなことなく、コミュニケーションの本質を次の理路でバチッと言い当てることができています。

人がもち得た「コミュニケーション能力」とは、社会システムや自律的な自己(あるいは他者を含めた互い)の文脈の維持を乱す誤差の調整が必要となった場合に於いて、調整行動を駆動できる能力である(p.125)

この指摘は、ぼくたちがコミュニケーションを単なる情報伝達であると矮小化した理解に陥りがちな現状に警鐘を鳴らすものだと思います。

また、ぼくが取り組む信念対立解明アプローチも、本書のコミュニケーションの定式化で言い当てることができますね。

信念対立解明アプローチは、意見の対立を調整する行動であることから、これはまさにコミュニケーション能力であると言えるわけです。

異分野の信念対立解明アプローチでも妥当するということは、それだけ本書がコミュニケーション論の根幹を論じることに成功していると解釈できるでしょう。

人間だけでなく昆虫も!

また、コミュニケーションの理解を深めるにあたって、昆虫のコミュニケーションも視座に収めた議論が展開します。

社会を形成するのは何も人間だけではありません。昆虫であっても社会を形成していることは自明です。 〜略〜 アリの集団は、こうした社会性を維持するために、共同で子(幼虫)の保護を行い、そのために彼らなりのコミュニケーション行動をとります。 〜略〜 何度も協力して強化し、最適化した経路をアリ同士で築いていくわけです。 〜略〜 これらのことからもコミュニケーションン行動は人間だけがもつものではなく、からだをもち、それを使って動く動物全般に存在しているものといえる(p.8)

この議論にも、先のコミュニケーション能力とは調整能力を駆動することだという考え方が反映されています。

コミュニケーションはダイナミックでインタラクティブなプロセスで絶え間なく生じる誤差を調整しながら最適解を導く機能をになうものだと理解することができるだろうと思います。

今すぐ読もう!

本書には、ここで紹介した以外にも、コミュニケーションの理解を深めるにあたって重要な議論がいくつも登場します。

ぜんぶ紹介することはできないので、本書の内容が少しでも気になった方は、今すぐ読みましょう。

しっかり読んで、それを踏まえた方が、だいぶ良質な議論を展開できると思います。

追記

森岡先生は他にもたくさん名著を出版されています。

以下の書籍もぜひ読みましょう。

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