
こんな方におすすめ
- 労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲーな件
- 広がる格差への対策
- 労働と格差の関係を理解したい人におすすめの本
先日、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」の結果を発表しました。
サンプルサイズは1000名(対象は30歳~49歳の男女)でして、その中の23.1%が貯蓄ゼロ円という結果を示しました。
2018年の結果は貯蓄ゼロ円が17.1%だったため、貯蓄ゼロ率が1年間で6%増加したことになります。
調査対象が就職氷河期世代を反映しているため、この結果はロストジェネレーション効果と表せますね。
OECDの調査結果が示すように日本における格差は拡大していますし、格差指標であるジニ係数も上昇しつつありますので、かつての一億総中流社会はすでに崩壊していると言えるでしょう。
世界的に考えても、全人口のトップ1%に富が集中していますから、富裕層と貧困層の乖離は凄まじいものがあるといえます。
以上を踏まえて、本記事では「仕事を頑張り続けたら格差を埋めることってできますか」という疑問にさくっとお答えいたします。
労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲーな件
結論から言うと、労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲーです。
理由は、日本は「資本主義」の社会だからです。
無邪気に「がむしゃらに仕事を頑張る!」では、マジでどうにもならない世界を生きているんです。
これは労働観、仕事観の相違では片づけられない社会構造上の問題です。
ぼくたち労働者は、まずこの現実を受け入れるべきです。
r > gの法則
さて、ピケティが『21世紀の資本』で明らかにしたように、資本主義では以下の法則が成り立っています。
r > g
この法則には経済学者からの反論があります。
けども、これは過去200年間の20ヶ国の膨大なデータから導出したものであり、一時の例外時期を除けば妥当することが明らかになっています。
r > gが成立しない例外時期は地球レベルで経済の破壊が起こった第一次世界大戦、第二次世界大戦のほか、資本家に対する課税強化などに限られます。
それ以外は、基本的にr > gの法則が成立することが歴史を通して支持されています。
r > gの法則は資本主義社会の基本ルールだと言えるでしょう。
r > gの意味
r > gの意味は以下の通りです。
資本収益率は常に所得の増加率を上回る
rは資本収益率を意味しておりまして、株、債券、不動産などです。
ここには、それらから得られる配当、利子、賃料なども含まれます。
他方、gは所得の増加率であり、これは経済成長率を示しています。
つまり、gは労働によって得られる所得の年間増加率です。
なので、r > gの法則は、給与所得・貯蓄に比べて投資・不労所得の方が効率的に資産を増やせる、という意味になります。
労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲー
ピケティが明らかにしたように、世界大戦などの例外を除いて、r > gの法則が成立しています。
資本家・投資家と労働者は富めるスピードに差があるため、時間がたてば立つほど格差は広がっていくばかりです。
r > gの法則があるので、実際問題として、労働によって格差を埋めることはほぼ無理なんです。
もちろん、資本主義は不況・恐慌を避けられない仕組みなので、不景気になれば資本収益率は鈍化します。
けど、不況・恐慌は所得の増加率にもダメージを与えます。
そして、その後の回復力は、所得の増加率よりも資本収益率の方に利があります。
それは現在、戦後最長の景気拡大で資本家が豊かになったのに、ぼくたち労働者の所得は増えずむしろ下がっている、ことからも理解できるでしょう。
広がる格差への対策
社会レベルの対策
r > gの法則は資本主義の根本問題なので、社会全体で対策する必要があります。
ピケティが『21世紀の資本』で明らかにした対策は以下の通りです。
ピケティの提案する対策
- グローバル累進資本課税
- 国際協調による金融情報の共有
その他にも以下の対策が必要です。
その他の対策
- 遺産相続に対する累進課税
- 教育格差の解消
- 労働改革 など
これらは、社会全体の問題なので個人でどうこうできないと感じるかもしれません。
でも、ぼくらは民主主義社会に生きています。
社会全体の対策を実現するには、選挙で広がる格差への対策に本気で取り組んでくれそうな政治家を選べばよいのです。
労働で広がる格差を埋めるのはほぼ無理ゲーなので、貯蓄ゼロみたいな悲惨な状態を減らすために選挙を通して社会全体を変えていきましょう。
個人レベルの対策
次に個人レベルでできる対策は以下の通りです。
個人レベルの対策
- その①:収入を増やす
- その②:支出を減らす
- その③:資産運用する
基本的には、この3つの対策を実行するしか個人レベルの対策はないです。
というのも、上記の対策は、ぼくら一般の労働者が資本主義を攻略できる可能性の方法だからです。
この3つの対策については、以下の記事で詳しく論じているので、ぜひあわせてお読みください。
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労働と格差の関係を理解したい人におすすめの本
労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲーな理由を詳しく理解したい人におすすめの本は以下の通りです。
おすすめ
- 21世紀の資本
- 資本論
21世紀の資本
とにもかくにも、まずは本書を読むべしです。
膨大なデータを示しながら、r > gの法則が成立する理由を詳解しています。
700ページ近い大著なので、入門書が手元にあった方がよいという方は、以下の記事で紹介しているのでご確認いただけたらと思います。
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資本論
『21世紀の資本』と同時に読むべきは本書です。
資本主義のメカニズムを解き明かしています。
こちらも大著なので、入門書もあわせて読みたい人は以下の記事もご確認ください。
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まとめ:労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理ゲーな件
本記事では「30代、40代の『貯蓄ゼロ』が23.1%というニュースを見ました。格差は広がっていると思いましたが、仕事を頑張り続けたら格差を埋めることってできますか」という疑問にお答えしました。
結論をいえば、労働で広がる格差を埋めるのは、ほぼ無理です。
この問題を解決するには、社会レベル、個人レベルの双方で対策が必要です。
どうにかして生きやすい社会にしていきましょう。
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