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観察研究の意味と種類を解説します【完全初心者向け】

京極真
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本記事では「臨床研究には介入研究と観察研究があると聞きました。介入研究は何となくわかるけど、観察研究ってなんですか?」という疑問にお答えします。

こんな方におすすめ
  • 観察研究のことが知りたい
  • 観察研究の種類について理解したい
  • 観察研究を学ぶための必読書を教えてほしい

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観察研究の意味と種類の前

本題に入る前に介入研究と観察研究を整理しておきましょう。

両者は研究テーマに何らかの介入が含まれるか否かで使い分けます。

対象に対する働きかけがあれば、介入研究を選びます。

そうでなければ、観察研究を選びます。

観察研究の意味と種類

観察研究の意味

観察研究とは、特定の事象に対して実験的な操作がともなわない研究法の総称です。

例えば、ABCR−14等を使って多職種連携で生じる信念対立の実態を明らかにしたい場合は観察研究を使います。

つまり、実態の解明に取り組む量的研究を、観察研究と呼ぶわけです。

観察研究を活用した研究研究はとても多く、学術雑誌に掲載された10のうち9の研究論文は観察研究であるという報告もあります。

観察研究がこれほど多用されているのは、これがそれだけ使いやすいからです。

同時に、観察研究の質を底上げすることで、研究の質を高められることも期待できれるわけです。

観察研究の種類

観察研究の種類はいくつもあり、代表的なものは以下の通りです。

観察研究の種類
  • 記述的研究
  • 生態学的研究
  • 横断研究
  • ケースコントロール研究
  • コホート研究
  • コホート研究を活用したケースコントロール研究

記述的研究

記述的研究(descriptive study)の目的は、疾病・障害の特性を明らかにすることです。

この目的を達成するために、記述的研究では新しいデータや既存の資料から疾病・障害の頻度・分布に関する何らかの仮説を設定します。

疾病・障害の頻度・分布の記述は時間、場所、人間のフレームで行います。

生態学的研究

生態学的研究(ecological study)の目的は、集団単位(世界、国家、都道府県、市町村など)で疾病・障害に関係する要因の関連を明らかにすることです。

この目的を達成するために、生態学的研究では既存の資料をデータにし、特性の異なる集団を対象に疾病・障害の構造を精査していきます。

集団単位の調査なので、結果が個人に当てはまらない生態学的誤謬という問題がともないます。

横断研究

横断研究(cross-sectional study)の目的は、ある時点における要因間の関連性を検証することです。

この目的を達成するために、横断研究は1時点のデータを収集し、存在率=有病率、相関関係、構造的関連性を検討していきます。

横断研究はデータ収集がしやすいため多用されますけど、因果関係については確定的なことはいえないという問題がともないます。

ただし、統計的因果探索の技術がさらに向上すれば、横断研究でも因果関係について明確なことが言えるようになるかもしれません。

ケースコントロール研究

ケースコントロール研究(case-control study)の目的は、ケース群(疾病・障害あり)とコントロール群(疾患・障害ない)を対象に、曝露歴の有無を調べていくことによって疾患・障害の原因と結果の関連を検証することです。

その基本方法は下図の通りでして、現在から過去に遡って曝露の有無を調べるものになります。

ケースコントロール研究は横断研究と違って因果関係を検証できますが、次に述べるコホート研究に比べるとその証明力は低下します。

コホート研究

コホート研究(cohort study)の目的は、何らかの曝露がある人とない人を縦断調査して、出来事の発生状況を調べることです。

コホート研究は前向きコホート研究(prospective cohort study)と後ろ向きコホート研究(retrospective cohort study)があります。

前向きコホート研究は対象集団を時間経過にそって追跡調査する方法です。

後ろ向きコホート研究は、過去のデータから曝露群と非曝露群を比較検討する方法です。

前向きコホート研究は研究開始時点で曝露群と非曝露群を設定したうえで出来事が発生する程度を比較検討するのに対して、後ろ向きコホート研究は過去のデータから曝露群と非曝露群を設定して出来事の発生の程度を比較検討するところに違いがあります。

後ろ向きコホート研究とケースコントロール研究の違いは、前者が疾患・障害などの出来事の発生率を、後者が曝露の存在率を検討するところにあります。

コホート研究は因果関係の証明力が高いですけど、横断研究やケースコントロール研究などに比べて時間的、経済的な負担が多大です。

コホート研究を活用したケースコントロール研究

ケースコントロール研究はコホート研究に比べると実行しやすいものの因果関係の証明力に劣り、コホート研究はそれに対して因果関係の証明力が高いものの実行が難しいという問題があります。

そうした問題を解決する方法として、コホート研究を活用したケースコントロール研究があります。

コホート研究を活用したケースコントロール研究
  • コホート内ケースコントロール研究(case-control study within a cohort)
  • ケースコホート研究(case-cohort study)

コホート内ケースコントロール研究はコホート研究の中でケースコントロール研究を行う方法です。

別名はネステッド・ケースコントロール研究(nested case-control study),シンセティック・ケースコントロール研究(synthetic case- control study)です。

ケースコホート研究もコホート研究の中でケースコントロール研究を行う方法です。

コホート内ケースコントロール研究とケースコホート研究はコントロール群の選択方法が違います。

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観察研究関連の本はいろいろ読んできましたが、その中でひとつ紹介しろといわれたら、上記の本をおすすめします。

世界的に高く評価されている疫学の教科書でして、観察研究の基本から応用まで丁寧に学ぶことができます。

もちろん、疫学の教科書なので介入研究についても詳述されています。

ぜひ手元に1冊おいておきましょう。

まとめ

本記事では「臨床研究には介入研究と観察研究があると聞きました。介入研究は何となくわかるけど、観察研究ってなんですか?」という疑問にお答えしました。

観察研究とは、特定の事象に対して実験的な操作がともなわない研究法の総称であり、その代表的な種類は以下の通りです。

観察研究の種類
  • 記述的研究
  • 生態学的研究
  • 横断研究
  • ケースコントロール研究
  • コホート研究
  • コホート研究を活用したケースコントロール研究
著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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