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作業療法
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作業療法=OBPの役割【最重要課題は生活習慣の再構築】

京極真
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本記事では「作業療法=OBPでは、クライエントのどんな作業を支援することになりますか。また『意味のある作業』という言葉を聞くと、旅行に行く、温泉に行く、など単発で終わるイベント的な作業をイメージしちゃいますが、そういう作業を支援するのですか」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 作業療法の役割がよくわからない
  • 作業療法の役割が知りたい
  • 意味のある作業の意味を理解したい

作業療法=OBP の役割

結論:作業療法=OBPの最大の役割は生活習慣の再構築

結論から言うと、作業療法= OBPでは生活習慣の再構築が最も重要な役割です。

作業療法=OBP は普段のその人らしい生活を取り戻すために作られたアプローチだからです。

作業療法=OBP と書くと、作業療法= OT の間違いではないかと思う人がいるかもしれません。

確かに作業療法の英語名はoccupational therapyであるため、略語はOTです。

それゆえ、作業療法=OT という指摘は間違っていません。

けど、作業療法=OBP という書き方も間違っていないんです。

OBPはoccupation-based practiceの略語です。

OBP は作業療法の源流を現代化した本質的なアプローチです。

つまり、作業療法の母体の復刻版なわけです。

なので、 OBP は作業療法そのものであり、作業療法=OBPと表現することができるのです。

生活習慣の意味

さて、元々の作業療法は生活習慣の崩壊が病気や障害の原因であり、健全な生活習慣を構築することが病気の治療や障害の回復につながると考えていました。

つまり、 生活習慣の再構築が作業療法にとって最も重要であり目指すべき方向性であったわけです。

生活習慣は日課と役割から形成されています。

日課というのは普段何気なくやってること全てです。

例えば、仕事、日常生活活動、遊び、休息などです。

役割は義務としてその人が行っていることです。

義務と言うと無理やりやっているかのような印象を受けるかもしれませんが、 決してそうではありません。

義務はその人が時間と場所を手に入れるものであり、義務があるからこそ生活が構造化され、一定のルールの下で営むことができるようになるからです。

役割の例としては、労働者、主婦、学生、ボランティア、生活人、趣味人などがあります。

これらは皆が普段からやってることであり、生活習慣を形成している重要な要素になってきます。

OBPは作業療法の母体の復刻版なので、その目指すべき方向性は健全な生活習慣の再構築です。

作業療法理論からみる作業療法の役割

これは、現代の作業療法理論を見ても如実に反映されています。

例えば、人間作業モデルを見てみると、作業療法は作業適応の再構築を目指すと位置づけられています。

作業適応は、クライエントが所属する生活環境と時間経過の中でその人らしい作業参加のパターンを上手に維持することです。

これは学問的説明なので難しいと感じるかもしれません。

でも、これをわかりやすく噛みくだくと、作業適応は適切な生活習慣を構築することだと表せるんです。

つまり、人間作業モデルもまたクライエントの日々の暮らしを取り戻すことに注力するための理論だと言えます。

意味のある作業と作業療法の役割

作業療法=OBPでは「意味のある作業」を支援の目的と手段として重視します。

「意味のある作業」というと、単発で終わる旅行に行く、温泉に行く、などの華々しい作業をイメージするかもしれません。

もちろん、作業は人間の経験なのでそれらもすべて含まれます。

だけども、普段の臨床で取り組む多くの意味のある作業は、その人にとって身近で、しかもできないと困るような作業です。

多くのクライエントは身体または精神に障害をもっておられるので、普段の何気ない生活の仕方を改めて検討する必要性にせまられがちです。

その中には例えば、ゴミの出し方、簡潔な料理の仕方、仕事のほどよい手の抜き方、近所つきあいの仕方、混雑時の買い物を避ける方法、新しい趣味の開発などさまざまな作業が含まれています。

つまり作業療法=OBPでは、日常に溶けこんだ何気ない作業の中で、その人にとって身近で、しかもできないと困るような作業にしっかり焦点を当てて、それをどうにかしてできるように支援していくわけです。

もちろん、終末期などで残される家族のために楽しい思い出を残したいといって「旅行に行く」「温泉に行く」という作業を支援することもあります。

そういう実践はとても価値がありますし、ぼくら作業療法士の人生観にも影響を与えかねないものです。

だけども、作業療法=OBPで日頃から焦点化する意味のある作業は、クライエントの日常に溶けこんでいます。

意味のある作業の多くは一見すると地味なんだけども、それができないと生活がままならない営みだと覚えておくとよいでしょう。

まとめ:作業療法=OBPの役割

本記事では「作業療法=OBPでは、クライエントのどんな作業を支援することになりますか。また『意味のある作業』という言葉を聞くと、旅行に行く、温泉に行く、など単発で終わるイベント的な作業をイメージしちゃいますが、そういう作業を支援するのですか」という疑問にお答えしました。

結論を言うと、作業療法= OBPでは生活習慣の再構築が最も重要な役割です。

その役割をまっとうするには、クライエントの日常に溶けこんだ作業を支援する必要があります。

作業科学の知識があるとそうした実践がやりやすくなるので、以下の記事もあわせてどうぞです。

OBPを学ぶためのおすすめの本については以下の記事で詳しく紹介しています。

著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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