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作業療法
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【解説】作業療法理論の特徴の捉え方

京極真
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京極真
京極真

本記事では「作業療法理論っていろいろあるけど、どうとらえたらうまく整理できるだろうか。また、作業療法における理論の意味も教えてほしいなぁ」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 作業療法理論の特徴の捉え方を知りたい
  • 作業療法における理論の意味を知りたい

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作業療法理論の特徴の捉え方

作業療法理論の特徴は、主に以下の観点から捉えると把握しやすいです。

  • 守備範囲の違い
  • 着眼点の違い

守備範囲の違い

まずは守備範囲の違いについてです。

例えば、守備範囲の違いに着目した分類には以下があります。

  • メタ理論(Meta Theory):作業科学、作業行動 など
  • 大理論(Grand Theory):人間作業モデル、作業遂行と結びつきのカナダモデル など
  • 中範囲理論(Middle Range Theory):CO-OP、感覚統合療法 など
  • 実践理論(Practice Theory):生体力学モデル、運動療法 など

守備範囲の関係でいうと、メタ理論>大理論>中範囲理論>実践理論です。

これは看護理論で昔からよく使われている分類で、作業療法理論の整理にも転用されています。

ぼくは「超メタ理論(Super Meta Theory)」という理論的次元に着目してますが、それを加えると以下のようになります。

  • 超メタ理論(Super Meta Theory)
  • メタ理論(Meta Theory)
  • 大理論(Grand Theory)
  • 中範囲理論(Middle Range Theory)
  • 実践理論(Practice Theory)

関係はこんな感じ。

超メタ理論>メタ理論>大理論>中範囲理論>実践理論でして、これからハイブリッド型のOTが求められるので、ぼくの予想では超メタ理論の価値が高まるはずです。

着目点の違い

理論の機能の違いに着目した捉え方もあります。

具体的には以下の通り。

  • 理論(theory):感覚統合理論、作業再構築理論 など
  • モデル(model):人間作業モデル、作業遂行と結びつきのカナダモデル など
  • 参照枠組み(flame of reference):作業適応モデル、リハビリテーションの参照枠組み など
  • 枠組み(framework):治療的作業のための概念的枠組み、クライエント中心の戦略枠組み など

適用範囲とは異なって、これらは互換性のある分類です。

一応、さくっと解説しておくと、理論は検証された原則の集合で現象を説明するものです。

モデルは概念と概念を論理的につないだものです。

参照枠組みは、理論を実践に適用するための原則を提供するものです。

枠組みは概念を構造化した者ですね。

これみてもわかるように、互換性がありまくりで、「理論」で十分表現できるから、個人的には使い分ける意味を見いだせないです。

けど、一応こういう分類もあるし、これにそって理論を整理している文献もあるので知っておくといいです。

作業療法理論は何のためにあるのか

結論:実践の基礎

結論をいえば、理論は実践の基礎です。

専門職が何らかの実践を行うための設計図だからです。

具体例

対象者にお話を聞くときに、作業療法の理論がベースにあれば、日々の暮らしの中でいかに動機づけられるのかに着目しながら面接を進めますよね。

これが他領域の理論に根ざしたら、身体と生活の関わりに着目しながらお話を聞くかもしれません。

あるいは、症状が生活に与える影響に焦点化した面接になるかもです。

こんな感じで、理論は専門職の行動を特徴づけるものでして、専門家として存在している価値を基礎づけるものです。

よくある疑問:理論と科学の違いは?

疑問

理論と科学の違いは?

確かに、科学に根ざした実践の重要性が強調されているので気になるかもです。

結論を言えば、理論は哲学と科学を武器に作るので、多くの場合、理論と科学をわけて捉える必要ないです。

また、理論の原則は科学で検証するので、理論だから非科学とか、理論と科学は関係ない、というのはありえないです。

なお、現象を説明するために、科学的に検証された言明による体系を構築していないものもあります。

その場合、きちんと検証可能性に開かれた言明なのかどうかを吟味したり、厳密な方法で検証しつつあるのかどうかを調べたりしたらOK。

検証していない or 検証しているけども誇張している、などの特徴があれば、眉唾なのかもで一定の距離をとればいいでしょう。

よくある疑問:理論と哲学の違いは?

疑問

理論と哲学の違いは?

確かに、ちょっと似ているっぽいところもあるので、そういう疑問をもつことは仕方ないです。

結論をいうと、哲学は理論の基礎を提供していると思っておけばOK。

例えば、信念対立解明アプローチは、現象学、構造構成主義を基礎にしながら作った理論です。

現象学、構造構成主義といった認識論(哲学)があったからこそ、信念対立解明アプローチを構築することができているわけで、その逆ではないです。

ちなみに、科学は哲学によって基礎づけられるので、諸学の基礎には哲学があると思っておけばOK。

まとめ:作業療法理論の特徴の捉え方

本記事では「作業療法理論っていろいろあるけど、どうとらえたらうまく整理できるだろうか」という疑問にお答えしました。

作業療法理論の特徴はいくつかの捉え方があって、ぼくとしては守備範囲という観点から捉える方法が収まりが良いと思っております。

本記事がみなさんの知識の整理に役立てばうれしいです。

著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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