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【解説】論文の質を吟味するための読み方の留意点【批判的吟味】

Makoto KYOUGOKU
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京極真
京極真

本記事では「論文の質を吟味しながら読む方法がわからないです。論文の質を吟味するための読み方のコツを教えってください」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 論文の質を吟味する読み方が知りたい
  • その読み方の留意点が知りたい

論文の質を吟味するための読み方以前モンダイ

論文の読み方は、目的によって変わります。

読むも「方法」の一つなので、当然のことながら目的に応じて遂行することになります。

例えば、ある領域に関する研究動向を勉強したいなら、過去5年分ぐらいの総説論文・システマティックレビューをいくつか入手し、はじめから終わりまで丁寧に読み込みます。

一度で理解するのは難しいでしょうから、何度も読み込みことになりますが、それでだいたいの動向がわかるはずです。

他方、論文の質を吟味したいならば、EBM方式で読みます。

EBM(evidence-based medicine)は、患者の価値観、専門家の経験、エビデンスを踏まえて最良の判断を行う方法論です。

論文の質を吟味するための読み方【批判的吟味】

論文の質の吟味は、徹底的に手続き化されているので、それにそって各論的に吟味していきます。

以下のサイトから批判的吟味のためのチェックシートが手に入ります。

さて、テーマは批判的吟味です。

批判的吟味を行いはじめると、どんな論文にも何かしらの問題があるということがよくわかります。

すごい良くできた研究でも、何らかの限界があります。

ぼくもかつてEBM(作業療法ではEBOTと呼びます)を熱心に取り組んで、いろんな論文を批判的吟味しまくった経験があるのでわかるのですが、とにかくやればやるほど不確かさだけが鮮明になってきます。

つまり、批判的吟味から確かな知識なんてほとんどないじゃないかという感覚を持つようになるわけです。

それは間違っていないのですが、そこから全か無かの法則に至ってしまう人が一部にいると感じています。

つまり、論文にちょっとでもダメなところがあると、論文全体を否定する読み方になってしまう。

鬼の首でもとったかのように「〜〜がなってないから、この論文はあてにならない」とか「〜〜じゃないから、読むに値しない」などとように、部分から一足飛びで全体を否定する考え方になってしまう人がいるんです。

批判的吟味は、怪しい情報で命を奪わないようにするために欠かせません。

が、一部から全部を簡単に否定する読み方は実際的ではありません。

理由は、ほとんどの論文が何かしらの限界を持つならば、使えそうなところと使えないところを個別に切り分けて読み解いていかないと、何も使えないことになるからです。

限界があるなら、それを踏まえたうえで活かせそうなところを見抜いていく。

そういうプラグマティッックな読み方が批判的吟味には必要だろうと、ぼくは感じています。

以上を踏まえて、論文の読み方のコツは、全肯定と全否定はさしあたりまずいかもしれないという認識を持ちながら読む、というものになります。

「なんだそんなことか」と思う人がいるかもしれませんが、これけっこう大切です。
批判的吟味しはじめると、全か無かで判断したくなる衝動に駆られることがあるからです。

これから論文の読み方(批判的吟味)を身に付けたい人の参考になればと思いますぅー。

まとめ:論文の質を吟味するための読み方の留意点

本記事では「論文の質を吟味しながら読む方法がわからないです。論文の質を吟味するための読み方のコツを教えってください」という疑問にお答えしました。

結論をいうと、論文の質を吟味しながら読むと、確かな知識なんてほとんどないじゃないかという感覚を持つようになりがちなので、全肯定と全否定はさしあたりまずいかもしれないという認識を持ちながら読む、という態度が重要です。

上記の留意点を念頭におきながら質を吟味してくださいね。

なお、EBMを学べるおすすめ本は以下で紹介していますのであわせてお読みください。

著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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