論理実証主義からプラグマティズムへ【作業療法士は原点に戻ろう!】

本記事では「臨床では実験・観察によって検証された知識・理論のみが重要であるなどと言われるけども、本当にその考え方だけでいいの?」という疑問にお答えします。

本記事のポイント

  • 実験・観察によって検証された知識・理論のみが重要であると強調する背景には論理実証主義があります
  • しかし、論理実証主義は原理的に破綻しています
  • 作業療法士の場合、論理実証主義よりもプラグマティズムが本質的によいです

前置き

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論理実証主義と作業療法

作業療法のルーツはプラグマティズムで、これは現在も生きています。

けど、論理実証主義に思考が支配された作業療法士をちらほら見かけることもあります。

プラグマティズムは公共の役に立てばよいので、そうした思考でもいいですが、論理実証主義に素朴に依拠している作業療法士は少し立ち止まって考える必要まります。

論理実証主義は厳密な検証を武器にするがゆえに、いまだに素朴に依拠している人はそのパワフルさに酔いしれて思考停止することがあるからです。

では、論理実証主義って何でしょうか?

論理実証主義は、実験・観察によって検証された知識・理論のみがOKで、それ以外は検証されていないから机上の空論に過ぎず駄目だ、という哲学です。

実験・観察を繰り返し行い、検証を進めることによって、知識・理論を確実なものにしていく。

論理実証主義はそう考えて、検証によって科学と似非科学を線引きし、科学的(この場合、客観的)に正しい知識・理論を蓄積します。

この論理実証主義は極めて厳密な方法であり、実証されていない仮説を見つけては否定する、という手続きが徹底していたためにあっという間に広がりました。

作業療法に強く影響を与えた古典的プラグマティズムは、論理実証主義の台頭で一時的に下火になりました。

論理実証主義にはそれぐらいパワーがあるので、いまなお作業療法士の思考にも影響しているのです。

論理実証主義の原理的破綻

では、プラグマティズムはどうやって復活を遂げたのか。

端的に言うと、論理実証主義が原理的に破綻しているということが明らかになったためです。

原理的破綻とは、その哲学の中心にある前提がそもそも成立していない、という意味です。

つまり、論理実証主義の「実験・観察によって検証された知識・理論のみがOK」であるという考え方そのものが、根底から成立がしないのです。

それゆえ、この主張そのものが無意味です。

論理実証主義の極めて深刻な欠陥を論証したひとりが、クワインです。

彼は論理実証主義者でありながら、1950年代に論理実証主義の根本的な前提が原理的に破綻していると明らかにし、ネオ・プラグマティズム誕生の契機を作りました。

論理実証主義は事実と命題(知識・理論)の検証を行うわけですが、そうするためには事実と命題(知識・理論)が必然的に結びついていなければなりません。

しかし、それはどう考えても原理的に不可能です。

単一の事実に対して、複数の命題(知識・理論)が対応することは起こりえますし、事実の特定自体が命題(知識・理論)のプロセスである以上、それをもって事実と命題(知識・理論)の対応関係を担保することはできないからです。

その他にも、カール・ポパー、トーマス・クーン、ヒラリー・パトナムなどが論理実証主義の深刻な問題を論証しています。

もちろん、論理実証主義はポスト実証主義などの展開の根にあるので、完全に無視することはできません。

しかし、すでに論理実証主義は歴史的使命を終えています。

実験・観察によって検証された知識・理論のみが重要である、と素朴な論理実証主義に依拠する作業療法士はその辺をクールに理解したほうがいいと感じています。

その考え方は底が抜けているわけですから。

論理実証主義からプラグマティズムへ

というわけで、作業療法士は論理実証主義の洗礼を耐え抜いたプラグマティズムについて少し関心を持つようにしましょう。

というのも、作業療法の哲学の中核はプラグマティズムだからです。


その系譜は複雑で込みいっているので、以下の2つの文献をもとに少し整理しておきます。

プラグマティズムはパースからはじまり、ジェームスとデューイがそれぞれ独自に展開しました。

この3人はプラグマティズムの源流に位置づけられ、作業療法の創始者たちと同じ時代を生きていました。

特に、デューイのプラグマティズムの作業論は、作業療法に決定的な影響を与えました。

プラグマティズムはその後、論理実証主義の洗礼を受けていったん影を潜めます。

しかし論理実証主義の問題点が浮上すると、プラグマティズムはネオ・プラグマティズムとして再生しました。

ネオ・プラグマティズムの主役はローティ、クワイン、パトナムです。

特にローティはジェームスとデューイを再評価し、ネオ・プラグマティズムの代表として牽引しました。

ところが、ネオ・プラグマティズムは相対主義に振り切れた運動を示しました。

その反省として、台頭しつつあるのが、ミサックたちの新しいプラグマティズムです。

ニュー・プラグマティズムは、プラグマティズムを一歩進めたネオ・プラグマティズムの反省にたって、古典的なプラグマティズムを再評価することによってそれを立て直すという方向性をもっています。

これは現在進行形の研究領域であり、今後の動向が注目されます。

さて以上を踏まえると、作業療法士がプラグマティズムを勉強するときは、どのプラグマティズムに焦点化したらよいか、という疑問が発生すると思います。

結論を言えば、パース、ジェームス、デューイの古典的なプラグマティズムに関する文献を読み込むとよいです。

先行研究を調べると、直接の接点があるのは古典的プラグマティズムであり、その後のプラグマティズムの発展は作業療法の形成にそれほど影響していないと考えられるからです。

古典的プラグマティズムのうち、特にジェームスとデューイは必読です。

作業療法の知識と技術を高めるために、ぜひ勉強しましょう。

まとめ

本記事では「臨床では実験・観察によって検証された知識・理論のみが重要であるなどと言われるけども、本当にその考え方だけでいいの?」という疑問にお答えしました。

論理実証主義は歴史的使命を終えています。

作業療法士は論理実証主義によって追い込まれたプラグマティズムの重要性を再認識しましょう。

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