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作業療法士が大学院に進学するメリットとデメリット【教員が語る】

京極真
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本記事では「作業療法士です。大学院への進学を検討していますが、メリットとデメリットを教えてください」という疑問にお答えします

本記事のポイント
  • メリットは研究力が向上する、活躍の場が広がる、人脈ができる、タフになる、などです
  • デメリットはたいはんの人はものにならない、時間的・経済的な負担が増える、研究職につける確証がない、研究室の選択が明暗をわける、などです

作業療法士が大学院に進学するデメリット

先にメリットから書こうかと思いましたが、デメリットから解説します。

デメリットを理解したうえで、メリットを読んだ方が腑に落ちると思うからです。

デメリット
  • たいはんの人はものにならない
  • 時間的、経済的な負担が増える
  • 研究職につける確証がない
  • 研究室の選択が明暗をわける  など

たいはんの人はものにならない

後で述べるように、大学院進学のメリットのひとつに研究力の向上があります。

しかし、研究者として大きく伸びるのは一部の人で、たいはんの人は箸にも棒にもかからないです。

もちろん、過剰に努力すれば学位論文は書けるでしょうし、査読付の学術誌に2〜3本は掲載されるかもしれません。

でも、多くの人がその後が続かないんです。

大学院に進学したら5年、10年はコンスタントに研究論文を出し続けることができれば、ものになる可能性がでてきます。

大学院に進学して頑張ったけど鳴かず飛ばずで終わるリスクがある、ということは承知しておくとよいでしょう。

時間的、経済的な負担が増える

また、大学院進学のデメリットには時間的、経済的な負担が増えるというものがあります。

例えば、大学院に在院中は、友達と遊びに行く余裕は壊滅的になくなりますし、恋人とデートする暇も、家族団らんで過ごすことも激減します。

好きだったゲームをする時間もなくなるでしょう。

また、学費のほかに、通学費がかかりますし、研究図書を自腹で持ち出す必要もでてきます。

人によっては、常勤から非常勤に切りかえるので、収入も減ります。

このように、大学院進学には時間的、経済的な負担増というデメリットがあります。

研究職につける確証がない

さらに残念なことに、大学院で修士号、博士号を取得しても、研究職につける可能性がとても低いですし、仮につけるとしてもいつになるかわかりません。

例えば、ぼくはいまでこそ大学ならびに大学院の教員ですが、ここに来るまでに複数の大学から不採択通知をもらっています。

また、ぼくの友達や教え子たちのなかにも、修士号、博士号を取得した後も研究職につけず、臨床で働きながら研究を続けている人たちがいます。

だから、「大学や研究所で働きたい」という理由で大学院に進学すると失望する可能性があると思っておくとよいです。

なかには、ロクに研究業績がないのに、さくっと研究職についちゃう人もいますので、コネと運があればどうにかなるかもしれませんが。

研究室の選択が明暗をわける

大学院進学のデメリットは、例え有名な大学院に進んでも選ぶ研究室を間違えたら悲惨な目にあうというものがあります。

例えば、博士論文を提出する直前になって指導教員から許可をもらえずに学位をとれない人、指導教員の人格が歪みすぎていてパワハラ、アカハラでひどい目にあう人、もう何年も研究論文を書いていない指導教員だったのでしょぼい指導しか受けられない人、などなど。

もちろん、よい研究室を選べば良質な研究指導を受けることができ、数年で見違えるような研究力をつけることができることもあります。

研究室の選び方を間違えるだけで、その後の人生の明暗が決まりかねない、というのも大学院進学のデメリットの1つです。

作業療法士が大学院に進学するメリット

ここからは、大学院進学のメリットです。

いろいろ書いてきましたが、ぼくの考えでは、大学院進学のメリットはデメリットを上回ります。

なので、ここからは希望をもって読んでください、笑。

メリット
  • 研究力が向上する
  • 活躍の場が広がる
  • 人脈ができる
  • タフになる  などなど

研究力が向上する

大学院進学のメリットは研究力が向上することです。

例えば、大学院に進学して研究力を高めて、当該領域の動向を決定的に変えるような仕事を成し遂げた人がいます。

また、大学院進学で研究力を鍛え上げて、作業療法に新しい可能性をもたらす理論を開発した人がいます。

他にも、重要な治療効果を証明したり、これまで不可能だった評価を開発したり、さまざまな可能性が大学院で鍛えられた人たちによってもたらされています。

上述したように、多くの人は大学院に進学しても鳴かず飛ばずです。

でも、一部の人はこの世界を変えるほどの研究力を備えるまでに成長します。

こういことは、作業療法士が大学院に進学しなかったら起こらなかったことです。

活躍の場が広がる

大学院進学のメリットは、活躍の場が広がることです。

例えば、ある人は博士号を取得し、精力的に国内外で研究論文を発表しており、世界的に評価されています。

またある人は、長年臨床で働いてから大学院で修士号を取得した後に、施設長に就任しました。

他にも、臨床で研鑽を積んだ後に、大学院へと進学してから大学教員になった人もいます。

このような活躍の場の広がりは、大学院進学で修士号・博士号を取得しなければ、たぶんなかったはずです。

人脈ができる

大学院は尖ったセンスをもった人たちに出会える場です。

それは、あなたにとってかけがえのない財産になるはずです。

例えば、大学院で研究を推進する過程で、全国レベルで臨床家とのコネクションを構築できた人もいます。

また、普通に生きていたら決して出会えなかったであろう天性の才をもつ人たちに出会うこともあります。

他にも、破壊的イノベーションを引き起こすために、人生をかけて研究している人たちとつながることができるかもしれません。

このように、大学院進学は貴重な人脈の構築に役立つはずです。

タフになる

大学院では数年間、かなりギリギリの勝負をし続けることになります。

四方八方から批判を受けることもしばしばあります。

限界まで努力した後にコテンパンにやられると凹みそうになりますが、いちいち落ち込んでいるほど暇じゃない。

無事にそうした日々を乗りきることができれば、多くの人はそこそこ精神的にも身体的にもタフになります。

多少の批判や非難には動じなくなるし、大変なことがあっても自然にどうにかして突破する道筋を見いだそうと努力している。

これは、大学院進学のメリットであろう、とぼくは考えています。

まとめ:作業療法士が大学院に進学するメリットとデメリット【教員が語る】

本記事では「作業療法士です。大学院への進学を検討していますが、メリットとデメリットを教えてください」という疑問にお答えしました。

素敵な大学院に進めば、自身の人生にとってかけがえのない体験になるはずです。

本記事が大学院進学を考えている作業療法士の皆さんの役に立つようでしたらうれしいです。

※大学院進学に関して記事を以下にまとめています。大学院進学を考えている人は参考にどうぞ!!

高校生、社会人の方向けの作業療法についての記事を以下にまとめています。

高校生、社会人の方だけでなくご家族の方も、進路を決める時の参考にご活用ください。

>>【受験】高校生のための作業療法士になるための完全マップ【まとめ】

著者紹介
京極 真
京極 真
Ph.D.、OT
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:人間科学部長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『OCP・OFP・OBPで学ぶ作業療法実践の教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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