作業療法の起源は3つある

2019年7月10日

きょうごく
本記事では「作業療法の起源ってなんですか。作業療法の起源について教えてください」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ

  • 作業療法の起源を知りたい
  • 作業療法の本質を理解したい

本記事を書いているぼくは作業療法士&博士(作業療法学)でして、元々は精神領域の臨床現場で作業療法士していました。

また現在は作業療法系の大学と大学院で教授しています。

本記事ではそんなぼくが上記の疑問にさくっとお答えします。

作業療法の起源は3つある

結論をいうと、作業療法の起源は以下の3つです。

作業療法の起源

  • その①:道徳療法
  • その②:プラグマティズム
  • その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

以下それぞれ解説します。

その①:道徳療法

作業療法の起源でもっとも有名なのが、道徳療法(moral treatment)です。

時代は17世紀から18世紀ぐらいです。

道徳療法と一言であらわしても、大きく言うと、フランスとイギリスで発展したものがあり、これらは同時代的に現れてきました。

両者の共通点と相違点を簡単にまとめると以下の通りです。

フランス イギリス
主導者 フィリップ・ピネル ウィリアム・テューク
哲学的背景 啓蒙主義 啓蒙主義
対象 精神障害者 精神障害者
治療法 作業 作業
学的基盤 医学的 宗教的、社会的

両者は、精神障害者の人道的処遇をめがけて作業を活用するなど、ほとんど同じです。

けど、フランスの道徳療法は医学的、イギリスの道徳療法は宗教的、社会的なところに学的基盤の中心があった点で違いがあります。

2つの道徳療法は精神科医のウィリアム・ラッシュ・ダントンによって作業療法へと発展的に継承されていきました。

もっと詳しく

その②:プラグマティズム

アメリカ哲学であるプラグマティズムも作業療法の起源です。

時代は19世紀から現代までです。

プラグマティズムには以下の3つの流れがあります。

プラグマティズムの主な系譜

  • 古典的プラグマティズム(1870年代から1920年代)
  • ネオプラグマティズム(1850年代から1990年代)
  • ニュープラグマティズム(2000年代から現代)

このうち、作業療法の起源にあたるのは古典的プラグマティズムです。

古典的プラグマティズムはパース、ジェームズ、デューイが発展させましたが、作業療法に影響を与えたのはジェームズとデューイです。

また、作業療法の中核原理である作業は、古典的プラグマティズムの作業論から直に援用したものです。

作業療法の哲学は古典的プラグマティズムの諸原理を応用したものです。

もっと詳しく

その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

最後の起源はアーツ・アンド・クラフツ運動です。

時代は19世紀です。

アーツ・アンド・クラフツ運動は人間性を回復するための芸術を通した社会主義改革運動です。

アーツ・アンド・クラフツ運動の主要人物は以下の通りでして、特に重要な役割を果たしたのはジョージ・エドワード・バートンです。

アーツ・アンド・クラフツ運動の主要人物

  • ジョン・ラスキン(1819年から1900年)・・・作家、詩人、美術評論家、社会思想家
  • ウィリアム・モリス(1834年から1896年)・・・詩人、芸術家、社会主義革命家
  • ジョージ・エドワード・バートン(1871年から1923年)・・・建築士、全米建築士協会副会長、アーツ・アンド・クラフツ運動協会ボストン事務局長、作業療法の提唱者、全米作業療法推進協会初代会長

バートンは建築士であり、障害をもつ当事者でした。

彼は自身の障害体験をもとに、アーツ・アンド・クラフツ運動と医療を結びつけ、宗教と医学を基盤にしたエマニュエル運動を経由しながら、作業療法の提唱へと至りました。

世界最古の作業療法の定義を示すなど、作業療法の始動に大きな影響を与えました。

もっと詳しく

起源からいうと作業療法は哲学的実践論

結論:起源からいうと作業療法は哲学的実践論

結論を言うと、作業療法は起源から考える限りにおいて哲学的実践論です。

作業療法の起源と哲学の関係を整理すると以下の通り。

作業療法の起源と哲学の関係

  • 道徳療法・・・啓蒙主義
  • プラグマティズム・・・アメリカ哲学そのもの
  • アーツ・アンド・クラフツ運動・・・社会主義

特に、作業療法とプラグマティズムの関係が重要です。

理由は作業療法は作業を通して健康と幸福を高めるアプローチですが、その「作業」はもともとプラグマティズムの(教育)哲学用語のひとつだからです。

作業療法の原則は3つの源流の合流点

全米作業療法推進協会はダントン主導のもと、1918年に9つの作業療法の原則を発表しています。

これは1919年には15の原則としてさらに発展していきました。

9つの作業療法の原則の例

  • 作業は治療を目的に実施する
  • 何らかの効果を持つ作業を用いるべきである

ダントンの作業療法の原則は、作業療法の基盤を形成するもので、現代の作業に根ざした実践(OBP)の原型に位置するものです。

重要なこととして、作業療法の原則は3つの源流の合流点に位置するということです。

というのも、ダントンは道徳療法をベースにしすつつ、アーツ・アンド・クラフツ運動とプラグマティズムを落とし込むかたちで作業療法を発展させているからです。

あわせて読む
ダントンに学ぶ作業療法の原理 その1

ダントンに学ぶ作業療法の原理 その1 ダントン 作業療法の父と称されるWilliam Rush Duntonは、1918年に作業療法の原理を提案しました。 Dunton WR: The princip ...

続きを見る

あわせて読む
ダントンに学ぶ作業療法の原理 その2

ダントンに学ぶ作業療法の原理 その2 ダントン ダントンの作業療法の原理には続きがあって、1918年にはじめて表明されてからわずか1年後の1919年に、NSPOTの委員会で15からなる作業療法の基礎原 ...

続きを見る

作業療法の実践には哲学の理解が欠かせない

そう考えると、作業療法の実践には哲学の理解が欠かせないです。

作業療法は哲学を手がかりに唱導されてきたからです。

作業療法の起源から考えると、作業療法を実践するには啓蒙主義、プラグマティズム、社会主義などといった哲学をしっかり学び、そのうえでそれを現代化した人間作業モデル、作業遂行と結びつきのカナダモデルなどの実践モデルを理解し、評価と介入にかかわる諸技法を習得するという学習プロセスが欠かせないと言えるでしょう。

作業療法を実践したい作業療法士は哲学からしっかり学ぶべしです。

あわせて読む
【2018年度版】根源から作業療法を理解するためのおすすめ哲学書10選

本記事では「作業療法の背景には哲学があるっていけども、何を読めば深く強く理解できるの?」という疑問にお答えします。 本記事のポイント 作業療法を根源から理解したいときは経験哲学、プラグマティズム関連の ...

続きを見る

あわせて読む
【必読】作業療法における作業の哲学的基盤を学べる本【4冊】

きょうごく本記事では「作業という概念は哲学由来と聞きました。作業を通して健康と幸福を高めるために、作業について深く強く考えられるようになりたいので、作業の哲学的基盤を知りたいです。でも、どの本を読めば ...

続きを見る

まとめ:作業療法の起源は3つある

本記事では「作業療法の起源ってなんですか。作業療法の起源について教えてください」という疑問にお答えしました。

結論からいうと、作業療法の起源は以下の3つです。

作業療法の起源

  • その①:道徳療法
  • その②:プラグマティズム
  • その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

本記事が作業療法の理解に役立つようならうれしいです。

好条件で働きたい作業療法士はこちらから

人気記事
作業療法士に強いおすすめ転職サイト・転職エージェント5選

きょうごく本記事では「転職したい作業療法士です。作業療法士におすすめ転職サイト、転職エージェントを教えてほしい。あと、転職サイト・転職エージェントを活用するコツなども知りたいなぁ」という疑問にお答えし ...

続きを見る

作業療法士を辞めたい人はこちらから

人気記事
作業療法士を辞めたい人におすすめ転職エージェント3選【辞める前提で登録すべし】

きょうごく本記事では「作業療法士を辞めたいです。作業療法士以外の業種に就きたいです。どうしたらいいですか」という疑問にお答えします 本記事の内容 作業療法士を辞めたい人におすすめ転職エージェント3選 ...

続きを見る

おすすめ記事一覧

1

きょうごく本記事では「現在の職場は人間関係が最悪で、労働条件も悪く、日々消耗しています。より好待遇な職場に移りたいです。おすすめの求人転職サイト・エージェントを教えてください」という疑問にお答えします ...

2

きょうごく本記事では「いまの職場は人間関係も労働条件も悪いので、より好待遇な職場で働くために転職したいです。医療福祉系の転職は転職サイトや転職エージェントを使ってもよいですか。おすすめはどこですか」と ...

3

きょうごく本記事では「コミュニケーション能力を高めたい。けど、そもそもコミュニケーション能力って何だろう?コミュニケーション能力の本質を理解したい」という疑問にお答えします 本記事の内容 コミュニケー ...

4

きょうごく本記事では研究を学べるおすすめ本を紹介した記事のまとめます こんな方におすすめ 研究を学べるおすすめ本を知りたい 選りすぐりのおすすめ研究本で学びたい 本記事を書いているぼくは作業療法士であ ...

5

大学院に進学したい作業療法士向けのまとめ記事。 本記事では、大学院進学に興味のある作業療法士向けに書いた記事をまとめました。 今後も記事は増える予定ですが、これから大学院進学を検討している人はぜひ参考 ...

6

きょうごく本記事では、このブログで解説した作業療法士を目指す高校生のための記事をまとめています 本記事の内容 『作業療法士が何なのかよく分からない』という人から、『作業療法士になりたい』といった方向け ...

7

きょうごく本記事では学会発表・学会参加で失敗したくない人向けの記事をまとめています こんな方におすすめ 学会発表・学会参加のコツを知りたい 本記事では学会発表・学会参加で失敗したくない 学会発表のレベ ...

-作業療法
-

Copyright© 京極真の研究室 , 2019 All Rights Reserved.