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作業療法
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作業療法の起源は3つある

京極真
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本記事では「作業療法の起源ってなんですか。作業療法の起源について教えてください」という疑問にお答えします。

こんな方におすすめ
  • 作業療法の起源を知りたい
  • 作業療法の本質を理解したい

作業療法の起源は3つある

結論をいうと、作業療法の起源は以下の3つです。

作業療法の起源
  • その①:道徳療法
  • その②:プラグマティズム
  • その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

以下それぞれ解説します。

その①:道徳療法

作業療法の起源でもっとも有名なのが、道徳療法(moral treatment)です。

時代は17世紀から18世紀ぐらいです。

道徳療法と一言であらわしても、大きく言うと、フランスとイギリスで発展したものがあり、これらは同時代的に現れてきました。

両者の共通点と相違点を簡単にまとめると以下の通りです。

フランスイギリス
主導者フィリップ・ピネルウィリアム・テューク
哲学的背景啓蒙主義啓蒙主義
対象精神障害者精神障害者
治療法作業作業
学的基盤医学的宗教的、社会的

両者は、精神障害者の人道的処遇をめがけて作業を活用するなど、ほとんど同じです。

けど、フランスの道徳療法は医学的、イギリスの道徳療法は宗教的、社会的なところに学的基盤の中心があった点で違いがあります。

2つの道徳療法は精神科医のウィリアム・ラッシュ・ダントンによって作業療法へと発展的に継承されていきました。

その②:プラグマティズム

アメリカ哲学であるプラグマティズムも作業療法の起源です。

時代は19世紀から現代までです。

プラグマティズムには以下の3つの流れがあります。

プラグマティズムの主な系譜

  • 古典的プラグマティズム(1870年代から1920年代)
  • ネオプラグマティズム(1850年代から1990年代)
  • ニュープラグマティズム(2000年代から現代)

このうち、作業療法の起源にあたるのは古典的プラグマティズムです。

古典的プラグマティズムはパース、ジェームズ、デューイが発展させましたが、作業療法に影響を与えたのはジェームズとデューイです。

また、作業療法の中核原理である作業は、古典的プラグマティズムの作業論から直に援用したものです。

作業療法の哲学は古典的プラグマティズムの諸原理を応用したものです。

その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

最後の起源はアーツ・アンド・クラフツ運動です。

時代は19世紀です。

アーツ・アンド・クラフツ運動は人間性を回復するための芸術を通した社会主義改革運動です。

アーツ・アンド・クラフツ運動の主要人物は以下の通りでして、特に重要な役割を果たしたのはジョージ・エドワード・バートンです。

アーツ・アンド・クラフツ運動の主要人物

  • ジョン・ラスキン(1819年から1900年)・・・作家、詩人、美術評論家、社会思想家
  • ウィリアム・モリス(1834年から1896年)・・・詩人、芸術家、社会主義革命家
  • ジョージ・エドワード・バートン(1871年から1923年)・・・建築士、全米建築士協会副会長、アーツ・アンド・クラフツ運動協会ボストン事務局長、作業療法の提唱者、全米作業療法推進協会初代会長

バートンは建築士であり、障害をもつ当事者でした。

彼は自身の障害体験をもとに、アーツ・アンド・クラフツ運動と医療を結びつけ、宗教と医学を基盤にしたエマニュエル運動を経由しながら、作業療法の提唱へと至りました。

世界最古の作業療法の定義を示すなど、作業療法の始動に大きな影響を与えました。

起源からいうと作業療法は哲学的実践論

結論:起源からいうと作業療法は哲学的実践論

結論を言うと、作業療法は起源から考える限りにおいて哲学的実践論です。

作業療法の起源と哲学の関係を整理すると以下の通り。

作業療法の起源と哲学の関係

  • 道徳療法・・・啓蒙主義
  • プラグマティズム・・・アメリカ哲学そのもの
  • アーツ・アンド・クラフツ運動・・・社会主義

特に、作業療法とプラグマティズムの関係が重要です。

理由は作業療法は作業を通して健康と幸福を高めるアプローチですが、その「作業」はもともとプラグマティズムの(教育)哲学用語のひとつだからです。

作業療法の原則は3つの源流の合流点

全米作業療法推進協会はダントン主導のもと、1918年に9つの作業療法の原則を発表しています。

これは1919年には15の原則としてさらに発展していきました。

9つの作業療法の原則の例

  • 作業は治療を目的に実施する
  • 何らかの効果を持つ作業を用いるべきである

ダントンの作業療法の原則は、作業療法の基盤を形成するもので、現代の作業に根ざした実践(OBP)の原型に位置するものです。

重要なこととして、作業療法の原則は3つの源流の合流点に位置するということです。

というのも、ダントンは道徳療法をベースにしすつつ、アーツ・アンド・クラフツ運動とプラグマティズムを落とし込むかたちで作業療法を発展させているからです。

ダントンについては以下の記事で詳しく紹介しています。

作業療法の実践には哲学の理解が欠かせない

そう考えると、作業療法の実践には哲学の理解が欠かせないです。

作業療法は哲学を手がかりに唱導されてきたからです。

作業療法の起源から考えると、作業療法を実践するには啓蒙主義、プラグマティズム、社会主義などといった哲学をしっかり学び、そのうえでそれを現代化した人間作業モデル、作業遂行と結びつきのカナダモデルなどの実践モデルを理解し、評価と介入にかかわる諸技法を習得するという学習プロセスが欠かせないと言えるでしょう。

作業療法を実践したい作業療法士は哲学からしっかり学ぶべしです。

以下の記事も合わせてお読みください。

まとめ:作業療法の起源は3つある

本記事では「作業療法の起源ってなんですか。作業療法の起源について教えてください」という疑問にお答えしました。

結論からいうと、作業療法の起源は以下の3つです。

作業療法の起源
  • その①:道徳療法
  • その②:プラグマティズム
  • その③:アーツ・アンド・クラフツ運動

本記事が作業療法の理解に役立つようならうれしいです。

また、以下の記事ではバートンについて紹介しています。興味のある方は合わせてどうぞ!!

著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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