
本記事の内容
- 作業に根ざした研究ができる大学院の紹介
- 作業に根ざした研究ができる大学院のメリット・デメリット
- 作業に根ざした研究ができる大学院でよくある質問
作業に根ざした研究が求められる理由
本題に入る前に、作業に根ざした研究が注目される理由を解説します。
先日、日本作業療法士協会の定義が改正されました。
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祝可決☆作業療法の新しい定義
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その要点は「作業療法とは作業を通して健康と幸福を維持・改善する」という意味を打ち出したことに集約されます。
これは、作業療法は作業に根ざした実践を行うものですよ、と宣言していることに等しいです。
作業に根ざした実践は作業療法の源流の現代化でありまして、世界の作業療法の定義をみても同様の傾向にあります。
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海外の作業療法の定義を調べて、日本の作業療法の新しい定義と比較してみた
本記事のポイント どこの国も「作業を通して健康と幸福を高める」という点で共通した定義です 日本作業療法士協会が提示した新しい作業療法の定義は世界的にみてもイケてます 世界各国の作業療法の定義を比較する ...
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作業療法は作業に根ざした実践を行うものですから、当然、研究も作業に根ざしたものであることが期待されます。
作業に根ざした研究は作業に関する知識を生みだします。
それは当然、作業と健康と幸福に関するものも含みます。
世界的な動向を踏まえても、作業療法が専門職としてクライエントに貢献するために、作業に根ざした研究に対するニーズは今後ますます高まることでしょう。
作業に根ざした研究ができる大学院の紹介
作業に根ざした実践を支える学問領域は、大きく言えば「作業行動」と「作業科学」です。
作業行動はすでにパラダイム化しており、作業科学はそれをゆりかごに生まれた領域だと言えますが、独自の進化をたどっていることも事実です。
そこで、本記事では日本作業行動学会と日本作業科学研究会に掲載されている情報に焦点化し、作業に根ざした研究ができる大学院として紹介します。
紹介する大学院は通学制、通信制の両方が含まれます。
通学制のメリット・デメリットは以下の記事を参照してください。
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作業療法士が大学院に進学するメリットとデメリット【教員が語る】
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また通信制のメリット・デメリットは次の記事がわりと有益かと思います。
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作業療法士のための通信制大学院のメリットとデメリット【教員が語る】
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なお、学会・研究会の情報は古くなっていることがあるので、進学を検討している人は必ず資料請求して最新の情報を確かめ、研究室訪問などで本当に作業の知識を生みだす研究に取り組めるかを確認してくださいね。
作業行動が学べる大学院
まずは日本作業行動学会のホームページから。
国立、公立、私立をあわせて5つの大学院が紹介されています。
そのうち、博士課程まであるのは3つです。
ぼくは首都大学東京大学院の博士課程を修了しておりまして、現在も作業に根ざした研究に取り組んでいます。
作業行動が学べる大学院
作業科学が学べる大学院
次に日本作業科学研究会のホームページから。
公立、私立をあわせて5つの大学院が紹介されています。
吉備国際大学大学院は日本作業行動学会でも紹介されていましたが、こちらのホームページでも紹介されています。
作業科学が学べる大学院
作業に根ざした研究ができる大学院のメリット・デメリット
ここからは、ぼくの経験から作業に根ざした研究ができる大学院のメリット・デメリットをさくっと解説します。
作業に根ざした研究ができる大学院のデメリット
メリット
- クライエントに貢献できる作業の知識を生み出せる
- 作業療法の専門性を高めることができる
- 作業療法の発展に直に貢献できる
クライエントに貢献できる作業の知識を生み出せる
繰り返しますが、作業療法とは作業を通して健康と幸福を維持・向上するアプローチです。
作業という現象は複雑怪奇でして、残念ながら相当な専門性がないとまともに捉えられないです。
作業に根ざした研究ができる大学院は、多くの場合で作業に関する高度な専門性をもった教員がおりまして、直に研究指導を受けることによってクライエントのための作業の知識を創出できることでしょう。
作業療法の専門性を高めることができる
全国には作業療法士を養成する多数の大学・専門学校があるものの、作業行動や作業科学を深く強く教えているところは限られています。
それゆえ、いまだに「作業療法がよくわからない」という作業療法士を生みだしています。
けど、作業に根ざした研究ができる大学院は、まともに機能していれば作業療法の専門性を深く強く探求しますので、独学でやるよりも効率的に極められるでしょう。
作業療法の発展に直に貢献できる
作業療法は約100年前に作業を通して健康と幸福を高める方法として誕生しました。
それを実証するのはなかなか難しく、2度ほど存続の危機に陥っています。
作業に根ざした研究ができる大学院は、それが適切に機能している限りにおいて、作業を通して健康と幸福を高める知識と技術を生みだすので、そうした危機を回避しつつ作業療法の発展に直接貢献できる可能性があります。
作業に根ざした研究ができる大学院のデメリット
デメリット
- 作業療法士にしか通じない知識を生み出してしまうことがある
- 強く意識しておかないと、他職種から求められる知識を生み出せないことがある
作業療法士にしか通じない知識を生み出してしまうことがある
作業に根ざした研究は「作業の知識」という作業療法の中でもコアな部分に接近していきます。
そのため、作業療法士にはわかるけども、他の領域に人たちには理解し難い議論になることもしばしばです。
ヘタすると作業療法士でもよくわからない知識を生むこともあるので、その点はご注意を。
強く意識しておかないと、他職種から求められる知識を生み出せないことがある
先のデメリットとかぶる部分もありますが、作業療法のコアな知見を生みだしがちなので、他職種から求められる知識を生めないことがあるという問題もあるでしょう。
作業療法の発展を考えると、他職種から必要とされる知識と技術を創出していく必要があります。
作業療法を深く深く探求していくと、どーしても視野が狭くなるので、その辺はかなり意識して他職種から求められる価値ある知識を生んでいかないとダメですね。
作業に根ざした研究ができる大学院でよくある質問
作業に根ざした研究ができる大学院でよくある質問は次の通り。
よくある質問
- その①:作業に根ざした研究ができる大学院って複数あるけども、その中からどう選べばよいか?
- その②:作業行動と作業科学のどっちがいいか?
- その③:視点を広げるために他領域の大学院に進学するべきか?
その①:作業に根ざした研究ができる大学院って複数あるけども、その中からどう選べばよいか?
大学院の選び方には一般的な方法がありまして、それをそのまま使えばよいです。
詳しくは記事で書きましたので、ぜひ参考にしてください。
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また通信制の場合は、以下の記事をお読みください。
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その②:作業行動と作業科学のどっちがいいか?
作業行動と作業科学はどっちも重要でして、どっちがいいかと言われたらどっちも必要という答えになります。
そもそも、作業科学は作業行動をゆりかごに生まれていますし、どちらか一方が欠けた状態で作業に根ざした研究を実施することはほぼ無理です。
大学院がまともに機能していれば、どちらの大学院に進んでも大なり小なり両方とも学ぶはずです。
が、学派の関係はビミョーなところがありまして、進学先によっては信念対立っぽい感じになることも。
その辺は、事前にしっかり情報収集してくださいませ。
なお、ぼくがいる吉備国際大学大学院は両方ともフラットに学べて研究できますので、うちを判断が難しい場合は選んでいただけるとよいかと。
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その③:視点を広げるために他領域の大学院に進学するべきか?
これはその人次第ですね。
ぼくの経験上、作業療法の専門性を自分なりに確定している人ならば、他領域の大学院にいっても大丈夫かと。
そうでないなら、指導教員とのやりとりで苦労したり、専門職としてのアイデンティティの危機を体験したり、とわりと苦労しがちです。
実際、ぼくは他領域の大学院に進んだ人たちから「医学系の大学院に進んだけど、指導教員(医師や看護師)が作業療法(または作業機能障害など)を理解できず、まともに研究指導してもらえないので助けてください」などという相談をたびたび受けます。
でも、そういう相談をされても、ぼくにできることはぶっちゃけほとんどありません。
他領域の大学院に進む場合は、こういう問題を自己解決できるかどうかをしっかり考えぬくべしです。
とりあえず資料請求しちゃいましょう
実際に進学を検討するには研究室訪問などは欠かせませんが、その前にまずは資料請求しちゃいましょう。
資料は各大学から直接とりよせる方法と大学院検索サイトからとりよせる方法があります。
各大学から直にとりよせる方法は各大学で異なるため、ここでは大学院検索サイトからとりよせる方法を解説します(資料請求は基本的に無料ですが、中には有料のものもあるのでご注意ください)。
なお、大学院検索サイトから資料を取り寄せられない大学院もあるので、その場合は上記にある各大学のホームページから調べて取り寄せてください。
さて、まず 大学院検索サイト にアクセスします。
「キーワードを探す」に大学院名を入れて検索します。
ヒットした結果から関心があるコースにチェックし、「チェックした大学・大学院の資料を取り寄せる」をクリックします。
必要事項を記入し、「お申し込み内容を確認する」をクリックします。
記載した情報を確認し、問題がなければ「上記に同意して送信する」をクリックして完了です。
まとめ
本記事では「作業療法士です。作業と健康と幸福の関連を研究するために大学院に進学したいと考えています。作業に根ざした研究に取り組める大学院を教えてください」という疑問にお答えしました。
作業療法士のレベルアップは、クライエントに貢献するために不可欠です。
大学院はその手段としてわりと有益です。
本記事を通して皆さんのレベルアップに貢献できたらうれしいです。
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