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質問紙尺度の分析で項目得点の単純合計を構成概念と見なす問題点と対策

京極真
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本記事では「質問紙尺度の構成概念の測定値に項目得点の単純合計を当てた分析でもいいですか。また、よりよい方法があれば知りたいなぁ」という疑問にお答えします

こんな方におすすめ
  • 単純合計を構成概念の測定値に当てていいかどうかわからない
  • 具体的な対策があるなら知りたい

質問紙尺度の分析で項目得点の単純合計を構成概念と見なす問題点

結論:概念間の推定値に歪みが生じる可能性あり

結論をいうと、概念間の推定値に歪みが生じる可能性ありです。

各項目の単純合計には測定誤差が含まれるため、構成概念間の関係性を表す推定値を適切に評価できないです。

特に以下のような場合に問題になりやすいです。

  • 項目数が少ない
  • 各項目の測定誤差が大きい
  • 質問紙の信頼性が低い など

こうした場合、質問紙の項目得点の単純合計を構成概念の測定値と見なすと、歪みが生じるので相関、因果などの概念間の関係を正確に評価できなくなります。

よくある疑問:よく見る方法だけども?

疑問

よく見る方法だけども?

確かに、項目得点の単純合計=構成概念の測定値と見なす方法は、昔からあるやり方なので分野によっては主流かもです。

けど、主流だからといって妥当なやり方だと言える保証にはなりえません。

皆が赤信号を無視しているからといって、それが正しい行いにならないことと同じです。

項目得点の単純合計は、いずれにしても測定誤差を考慮できないです。

なので、基本的には測定誤差を考慮した方法でデータ分析した方がいいでしょう。

よくある疑問:測定誤差ってなんなん?

疑問

測定誤差ってなんなん?

質問紙尺度の目的は、真値を測定することですよね。

測定値=真値となれば、話は簡単なんですが、実際にはそうなりません。

測りたくて測った値のなかに、測っていないものの影響が含まれちゃうからです。

それを測定誤差といいまして、測定値=真値+測定誤差というかたちで表すことができます。

測定誤差が大きくなると測定値の精度が低くなっちゃうのですが、合計得点で丸めちゃうとその影響を除けないので、結果として結果を正しく評価できない、、、という事態に陥るわけです。

【対策】質問紙尺度の分析では構造方程式モデルで構成概念の測定値を求めてみよう

構造方程式モデルを活用する

ではどうしたらいいか。

結論をいえば、構造方程式モデル(別名:共分散構造分析)の活用を検討したらOK。

構造方程式モデルでは、各項目得点の分散から共通の分散(構成概念の測定値)と独自の分散(測定誤差)を切り分けることができるからです。

つまり、各項目の得点の単純合計を構成概念の測定値と見なすことで生じる測定誤差の混入という問題を回避することができます。

それにより、構成概念間の関係性を表す推定値を適切に評価するとことが可能になります。

分野によっては、構造方程式モデルはあまり使われていないかもです。

けど、視点を広げたら普通に人口に膾炙した手法なので、積極的に活用していきましょう。

構造方程式モデルを学びたい人におすすめの本については以下の記事で紹介しています。

よくある疑問:無料で使える統計ソフトはあるの?

疑問

無料で使える統計ソフトはあるの?

結論をいえば、あります。

構造方程式モデルが使える無料の統計ソフトには以下があります。

  • Rのlavaan
  • JASP
  • HAD など

いずれも使用に耐える機能をもっていますので、ぜひ使ってみてください。

統計ソフトについては以下の記事でまとめています。

また、Rのlavaanは以下の記事でさくっと解説しています。

よくある疑問:構造方程式モデルでどんなことができるの?

疑問

構造方程式モデルでどんなことができるの?

質問紙尺度の分析では構造方程式モデルを使うとよいこといろいろありですが、どんなことができるの?という疑問は感じるかもです。

結論をいえば、ざっくり示すと以下のようなことができます。

できることの例
  • 相関分析
  • 単回帰分析
  • 重回帰分析
  • ロジスティック回帰分析、
  • ポアソン回帰分析
  • 確認的因子分析
  • 探索的因子分析
  • 項目反応理論
  • ラッシュモデル
  • マルチレベルモデル
  • 潜在クラス分析
  • 成長曲線モデル
  • 多母集団同時分析 など他多数あり

こんな感じでいろいろできるので、ご自身の研究目的にあわせて柔軟に活用していきましょう。

まとめ:質問紙尺度の分析で項目得点の単純合計を構成概念と見なす問題点と対策

本記事では「質問紙尺度の構成概念の測定値に項目得点の単純合計を当てた分析でもいいですか。また、よりよい方法があれば知りたいなぁ」という疑問にお答えしました。

ある分野によっては当たり前の話ですけども、他の分野にとってはあまり知られていないことだったりするので、知識を整理しつつうまくアップデートしていきましょう。

著者紹介
京極 真
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授。作業療法学科長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『作業療法リーズニングの教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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