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作業療法
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【初心者向け】作業機能障害とその種類を解説します【研究者が語る】

京極真
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本記事では「作業療法は作業機能障害を解決する方法だと学びましたが、作業機能障害って何ですか?またいくつかの種類があるとも聞きました。どんな種類があるんですか?」という疑問にわかりやすく答えます。

本記事の内容
  • 作業機能障害が理解できる
  • 作業機能障害の種類が理解できる
  • 作業機能障害とその種類を測定できる評価尺度がわかる【厳選2つ】
  • 作業機能障害とその種類でよくある疑問

作業機能障害とは何か?その種類を解説する前に

作業機能障害はoccupational dysfunctionの和訳でして、適切に「作業ができない or 作業に関われない」ために生じる人間経験の問題です。

ここでいう作業とは仕事、日課、遊び、休息など日々の生活を構成するすべての諸活動でして、原理的には人間の経験ということができます。

作業機能障害に類似した用語に作業疾患、作業役割機能障害、作業遂行障害、作業遂行機能障害、作業遂行上の問題などいろいろありますが、基本的に同じ問題を指していると理解すべしです。

作業機能障害の直接の原型は作業療法という概念を提唱したBartonの「作業疾患」に求めることができます。

Bartonは「薬としての作業」という視点をもっていまして、症状・障害という問題を解決する方法として医学があるように、作業疾患という問題を解決する方法として作業療法があると考えていました。

方法は問題解決するために存在しているので、作業療法という方法で解ける問題を明確にしたわけです。

ただし、Bartonのこのアイデアが実質化するには、Reillyの作業行動とそれをマザーモデルにしたKielhofnerの人間作業モデルの誕生を待つ必要がありました。

Reillyは作業役割機能障害という用語を使って、仕事、日課、遊び、休息など日々の生活を構成する諸活動が適切に行えない状態を捉えていました。

彼女の作業行動は「作業役割」を軸にしておりまして、それゆえ「作業役割」機能障害を作業療法で解く問題にしたわけです。

Reillyの弟子のKielhofnerは作業機能障害という概念を使ってそれをより拡張性のあるかたちに置きなおしました。

Kielhofnerは人間作業モデルのコアコンセプトである意志、習慣化、遂行能力、環境を使い、作業機能障害という問題の本質を解き明かしていきました。

結論を示しておくと、その要諦はやはり人間経験の問題というものでした。

人間作業モデルにおける作業機能障害は第1版、第2版で詳述されており、特に第2版は最も完成度が高いので作業機能障害を理解したい人は何度も精読すべしです。

作業機能障害の種類とは?

その後、様々な研究を通して、作業機能障害にはいくつかの種類があることがわかってきました。

作業療法実践において作業機能障害の種類の理解は圧倒的に重要です。

作業機能障害の種類は以下の通りです。

作業機能障害の種類
  • 作業不均衡
  • 作業剥奪
  • 作業疎外
  • 作業周縁化

なお、作業機能障害の種類は、新しい作業療法理論である作業に根ざした実践2.0(Occupation-based practice2.0、OBP2.0)のコアコンセプトの1つです。

なので、実際に作業療法で使うためには、OBP2.0の理解が必要です。

作業不均衡 occupational imbalance

作業不均衡とは、クライエントの日々の作業のバランスが崩れた状態です。

作業のバランスは意味、時間、種類などがありまして、作業不均衡を評価するためには多角的な視点で生活習慣をとらえる必要があります。

例えば、1つの作業に多くの時間がかかる、やりたくないことばかりやっている、休息ばかりしている、などは作業不均衡の一種です。

作業不均衡は健康と幸福を低下させるため、作業療法は伝統的に作業不均衡の改善を重視しており、健全な生活習慣の再建は作業療法のお家芸であると言えます。

作業剥奪 occupational deprivation

作業剥奪とは、クライエント自身の意向に関係なく、外的な理由によって作業ができない、作業に関われない状態です。

例えば、車椅子にのっている脊髄損傷をもったクライエントが、段差があるために映画館で趣味の映画を鑑賞できないのは作業剥奪です。

作業剥奪は社会参加する機会を奪うだけでなく、心身の状態を悪化させたり、やる気を低下させたりするなどさまざまな問題を引き起こします。

作業剥奪は、作業が継続的に奪われた状態でありまして、健康と幸福を低下させる問題なのです。

作業疎外 occupational alienation

作業疎外とは、クライエントが作業に対して意味を見いだせない状態を表しています。

例えば、病院・施設のスケジュールにそって単調な生活を送っている場合、そのクライエントは作業疎外を経験しているかもしれません。

また、何かしていてもつまらなく感じたり、淡々とこなしているだけのときも、作業疎外を体験しているといえるでしょう。

作業疎外は、自分がやっていることに価値を見いだせなかったり、人生に意味を感じられなかったりする問題であり、健康状態や幸福感の低下につながります。

作業周縁化 occupational marginalization

作業周縁化とは、クライエント自らが意志決定プロセスに関われず、意味のある作業ができない or 作業に関われない状態を意味します。

例えば、統合失調証をもつクライエントが、正規の仕事に就きたくても病気だからという理由でつけない場合は作業周縁化を体験しているといえます。

また、してもしなくても誰からも感謝されない作業に取り組まざるを得ない人も、作業周縁化の状態にあるといえるでしょう。

作業周縁化は自分の人生をコントールできているという感覚を奪い、心身の健康状態の悪化を促進したり、幸福感の低下をもたらす可能性があります。

作業機能障害とその種類を測定できる評価尺度

作業機能障害とその種類を直接測定できる評価尺度は以下の通りです。

  • 作業機能障害の種類と評価
  • 作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール

2つの尺度はともにOBP2.0を基盤にしています。

なお、作業機能障害全般に関して言えば、もっとたくさんの評価尺度があります。

それはまた別の記事で紹介します。

作業機能障害の種類と評価 Classification and Assessment of Occupational Dysfunction(CAOD)

CAODは4因子16項目からなる自記式評価です。

障害者でも健常者でも使えまして、作業療法評価全般においても完成度が高いです。

以下の記事から無料でダウンロードできます。ご利用ください。

作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール Screening Tool for classification of Occupational Dysfunction(STOD)

STODは4因子14項目からなる観察式評価です。

精神障害者を対象に開発されてまして、現在、身体障害者でも使えるかどうかを調べているところです。

以下の記事から無料でダウンロードできます。ご利用ください。

作業機能障害とその種類でよくある疑問

よくある疑問は以下の通り。

よくある疑問
  • その①:作業的不公正の種類も作業不均衡、作業剥奪、作業疎外、作業周縁化です。作業機能障害と作業的不公正はどう違うのですか?
  • その②:他職種に作業機能障害とその種類を説明するときはどうしたらよいですか?この概念をそのまま使えばよいですか?
  • その③:作業機能障害とその種類を研究したいです。おすすめ大学院はありますか?

その①:作業的不公正の種類も作業不均衡、作業剥奪、作業疎外、作業周縁化です。作業機能障害と作業的不公正はどう違うのですか?

ぼくの考えでは、作業機能障害は健康問題です。

他方、作業的不公正は政治問題です。

つまり、両概念は「作業ができない or 作業に関われない」という状態を、健康と政治という異なる次元で捉えていると理解するとよいです。

なので、その種類は共通しつつも、趣の異なる議論が展開しているわけです。

その②:他職種にも作業機能障害という概念をそのまま使えばよいですか?

コミュニケーションという方法は、他者との対話を促進するという課題に対応しています。

なので、使用する言葉は他者が咀嚼しやすいものにすべしです。

例えば、作業機能障害は生活障害、日常生活上の困難さなどに置きかえると理解しやすいかもしれません。

専門性を理解してもらいながら連携したい場合は「作業機能障害」という用語を使いつつ、わかりやすい説明を行っていくとよいです。

その③:作業機能障害とその種類を研究したいです。おすすめ大学院はありますか?

作業行動、作業科学に精通した教員がいる大学院を選ぶと良いです。

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まとめ:【初心者向け】作業機能障害とその種類を解説します【研究者が語る】

本記事では「作業療法は作業機能障害を解決する方法だと学びましたが、作業機能障害って何ですか?またいくつかの種類があるとも聞きました。どんな種類があるんですか?」という疑問にわかりやすく答えました。

作業療法は作業機能障害という問題を解決するための方法です。

つまり、作業機能障害の理解は作業療法の正否に影響します。

なので、作業療法士、作業療法学生は作業機能障害の理解を深めましょう!

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著者紹介
京極 真
京極 真
Ph.D.、OT
1976年大阪府生まれ。Ph.D、OT。Thriver Project代表。吉備国際大学ならびに同大学大学院・教授(役職:人間科学部長、保健科学研究科長、(通信制)保健科学研究科長、他)。首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程・終了。『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』『OCP・OFP・OBPで学ぶ作業療法実践の教科書』『作業で創るエビデンス』など著書・論文多数。
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